□やみ と ひかり の おはなし□


むかし、むかし。

神様はこの世界を創りました。

全てのモノをたった一人で創り上げたのです。

長い長い時間をかけて、ようやく全ての名前を決めました。




まずは、混沌と渦巻いていたものを『闇』と。

次に、闇から分かれた『光』と。

――頭上にあるモノを『空』。

――足元にあるモノを『大地』。

――『火』を。

――『水』を。

――……

――…

そうして名前を与えられたモノたちは、世界中に散りばめられました。

神様の世界は出来上がりました。




神様はとても嬉しくなり微笑みましたが、次第に悲しくなっていきました。

その世界は、変化のない、退屈な世界でした。

世界には『何か』が足りませんでした。




神様は考えました。

世界に加える為の新たなモノを創る、その手を止めて。

名前を決める時と同じくらい悩みました。




そうして、ある日、気付いたのです。

世界には『何も』無かったことに。

色も。

匂いも。

輝きも。




「『闇』よ。お前には『黒色』をやろう。

――『光』よ。お前には『白色』をやろう。

――『空』よ。お前には『青色』を。

――『大地』よ。お前には『茶色』を。

――『火』には『赤色』。

――『水』には『薄藍色』。

……

…」




神様は、全てのモノに、色を与えました。

幾らかのモノには匂いを。

必要なモノには輝きを。




世界は、今度こそ、完成しました。



神様は満足して天上に帰ることにしました。

一言だけを地上に残して。

「『闇』よ。『光』よ。

お前達は、最初に創られたモノ。

この世がより良くなるように見守ってやっておくれ。

『光』よ。

お前は、最も必要とされるだろう。

『闇』よ。

お前もまた必要とされながら…けれど、最も恐れられるだろう。

それ故に。

お前は『光』の前に居てはいけないよ。

全てのモノが心に翳りを持ってしまうから」





美しい世界。

神様の作り上げた世界。

『闇』を怖れる世界。




――それは私たちの在る、世界での…むかし、むかしのお話。